Solid State Parhelia

explanation of "Solid State Parhelia"

Solid State Parhelia ― 石の見た夢 ―

これは、静物画である。

静物画であるが、描画され、動き続けることなしには成立し得ない、拡張された絵画である。

ひとたび起動せしめると、プログラムはある循環に準じて画面を生成し続ける。


その循環について触れながら、まずは本作のアーキテクチャを説明したい。

我々の日々暮らしている空間は、その時間軸を除き、観念的には3次元の空間として捉えられている。ここでは、そのユークリッド空間上x,y,z,3方の座標軸を有する3次元の空間をベースに、便宜的に上位、下位という言葉を用いて記述する。


とある空間が存在し、そこにオブジェクト(物体)が静置されている状況がある。これを上位空間と仮定する。我々がそのオブジェクトを視認するということは、どこからかに視点が存在するということと同義である。

オブジェクトを取り巻く視点。そして、その視点よりオブジェクトを捉える視野。

例えば、その視界がデジタルイメージとして生成される時、それは、ビットマップと呼称される、ピクセル単位でソートされたパーティクルの羅列となる。それは描かれた絵であろうと、現実世界よりカットアウトされた写真や映像の1フレームであろうと、同様にx,y,2軸を有する平面、つまり2次元の情報として扱われる。我々はその順列によって、そこに何かしらの情報を見出すだけで、根本的にそこに存在するのは、全てが等価の、唯の粒子である。

それら平面状に整列する数多の粒子=ピクセルに、各ピクセル毎、対応する視点からオブジェクトまでの距離、すなわち奥行きに値する長さを、z軸座標として附帯させた時、平面は再びパーティクルの群れとなって3次の空間へ還元される。ピクセルであったものは分散し、隣接していたピクセルの間を満たすのは、無の空間=ボイドである。つまり、その視点における視界のデジタル情報のみが構成する空間が出来上がる。

その還元された空間を下位空間とする。すなわち、それは上位空間の微分構造として、上位空間における視点の数だけ、並列に存在する空間となる。

本作では、その下位空間において存在している、分断化され3次元に散らばったピクセル=パーティクル群を、再びオブジェクトと認識し、その周囲を取り囲う視点というものを定めている。そして、ループする形態に配列したそれらからの情景を、上位下位空間共に並行して、視点を切り替え、推移させ繋ぐことで、余剰次元である上位3軸と合わせて6次元を表現している。

先に述べた視点の切り替えとは、映画「マトリックス」のワンシーンに見られるような、カメラワークを想像して頂くと良い。後でも触れることになるが、その視点の移動には概念上、時間軸を孕んでおらず、全てが同時の瞬間であるという点に留意している。下位空間に主眼を置いた場合、上位空間における視点移動とは、並行する空間への変移として表れる。数十分の尺を持って、同じ状態が描画される状況へと循環する。


次に、コンテンツについて言及する。

この絵のモチーフからは、一見してヴァニタスが想起されることを考えている。

ヴァニタスとは、寓意性を孕んだ静物画の一つのカテゴリーで、空虚を意味する。頭蓋骨やヴァイオリン等は、その象徴的なモチーフとして、死を前提とした人生の空しさを説いているが、ここで用いるそれは、表面的にはクリシェに過ぎない。恣意性は、モチーフから派生するメタファーではなく、そのフレーミングにある。

ここにあるものは、私のパートナーの最も大切にしているヴァイオリンであり、キャプチャに基づく私の頭蓋骨であり、あるいは私のトランペットである。いわば私の身辺であるそれらに、個人的な物語は内包されている。

その中で、モチーフのひとつとして登場する青い鳥は、それのみが例外的に時間軸を有しており、林檎を啄んでは飛び去って行くという、一連のアニメーションを保有している。そして、変移する空間の間を縫って行く。それは私の個人的な範疇から逸脱し、外部からの干渉を象徴する存在でもある。


自らの外縁を策定した上で、その物語の内的なコンポジションから、パーティクルは離散と集合を重ね、音も無く変遷を繰り返す。ヴァニタスが、死への「先駆的覚悟性」と言えるならば、その被投性を自覚し、自己投企へと繋がる一連を指し示す。

鑑賞者の視覚の上で、いつしかそれはクラインの壺のように外側へと転じ、広がる宇宙のイメージを、揺蕩うパーティクル群に認めるだろう。

その先に起ち上がるものは、パーセプションの明日へと誘う夢なのである。

caption

分類 - category
: installation
制作年 - year of manufacture
: 2010
作品寸法 - size
: w:7000 h:4000 d:7000
: 6400*1800 - screen
素材 - materials
: projecter 1920*1080 *2
: panel 6400*1800 - screen
: pc - output HDMI
: preRendered Images
: Zdepth maps
: Optimized Program
: etc.
制作協力 - collaborator
: 野上 大輔 - Daisuke NOGAMI

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